* Advanced *

この項ではガットの聞き方で、特殊な部分を考察してみました。

ここのページはインド音楽をある程度聴いている方達向けです。用語も専門用語を多発しています。現状の奏者が、どういう技術を駆使してるか、何をやっているか理解してみようというコンセプトです。

理論に基づいているとはいえ、たくさんの奏者が同じ事をしているのもアレ(どれ?)なので、オリジナリティを追求した結果色々な奏法が出てきているのが現状なんでしょう。リスナーがそれを理解するのもある意味大変です。

下記解説以外にもまだ技はあります。何をしているのかわからないから解説してほしい、という要望があれば、私が理解出来るものであれば追加していくつもりですので、メールや掲示板等でリクエストして下さいね。

Act 1 : ムクラについての考察

ムクラとは、ソロ(ターン)をサムに返さずスタイ旋律の頭に繋げる為に返す技です(ココで復習してね)。ティハイを利用するとよりかっこいいですね。私はターンを終えてタブラ側にソロを譲る際によく利用します。違う展開のターンに持っていくつもりで展開上ムクラ返しをすると、タブラ奏者が誤解してソロを始めてしまい困る時もあったりします(^^;)。

奏者によっては、ティハイのサム返しを殆どせずに、ひたすらティハイ+ムクラ返しを連発する方も居ます。インド音楽の聴き初めには、ティハイがサムに帰るかどうかを意識して聴くものでしょうし、私も初めて聴いた時は「あれ?」と感じたものです。

奏者として感じるムクラ返しの利点は、返してからサムまでにスタイを弾けるので、そのスタイもまたヴァリエーションで楽しめる事、その間にタブラ奏者が遊べる事、その間に気分的に少し休憩出来る、等でしょうか。

そしてスタイの表情が常に現れるので、旋律やラーガの表情がより明確に感じられると思います。ターンでさえスタイのヴァリエーションなんだという気がしてきます。私も最近はティハイ+ムクラのコンビネーションが凄くかっこいいと思うようになりました。

またタール理論においては結局サムは強調すべき拍子という位置付けですから、何もかもティハイで決めてやる必要は無いんですね。故Vilayat Khanのように旋律を非常に重視している奏者にとっては、ティハイは却ってムードを壊すという趣旨なのか殆ど使わないという考え方もあります。

私の最近の見解ですがラーガ奏者の立場として思う事は、もうアラープが全てなんです。それもリズム面が入る迄のアラープが最重要です。ここでラーガの持っている世界を表現し、歌い上げ、そしてリズムが入って来る事により徐々にエンターテイメント性が増して来る、という感じです。

私も以前はガットの方が聴くのは好きでしたが、今ではアラープが一番好きです。つまり私も段々マニアックになってきている、という事でしょうか?

ガットはかなりエンターテイメント性が強いと思います。ので、どうせなら遊び倒してやろうというのが私のスタイルだったりしますが、それは奏者個々の考え方にも依存します。あくまでムードを大事にという奏者も多いでしょう。流派にもよるでしょうし、その辺りは完全に好みでしょうね。

一体ムクラの何を考察しているのかよくわかりませんが、この項はこの辺で。

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Act 2 : ラヤカリ解析

知り合いの奏者達から強くリクエストを受けていた、インド古典ならではのリズムマジック、ラヤカリの解説を致します。

ラヤカリとは何でしょう。要は変なリズムです。伴奏者が1つのマトラ(ビート)を刻む時に、ソロ奏者側は素直にのりにくい音符を刻んだりします。例えば5とか7とか。

そして高度なそれは、「伴奏者とは全く違うテンポでソロが展開されていくが、数学的計算の元、きちんとサム等では両者が融合する」という、リスナーを混乱の渦に巻き込む恐るべき最終兵器です。奏者には高レベルなリズムセンスが要求されると思います。

計算して演奏出来るものもあれば、感覚でしか出来ないものもあります。私の中でのラヤカリ王はShiv Kumar Sharma氏です。それからShahid Parvez氏、私の師Debashish Sanyal氏のそれらもかなり個性的ですね。「要はサムで合えば文句ないだろう?」という乱暴な表現が私的にはピッタリだと思います。

伴奏者側、つまりされている側はたまったものではありません。タブラソロでラヤカリ返しをされるまで私も気付きませんでしたが、ただリズムを刻むだけでも難しいのです。ラヤカリを行なうより難しい気さえします。あっさり対応するタブラ奏者の方達には私は本当に敬意を表します。

ラヤカリはエンターテイメント性が強すぎるので、奏者によっては好まない人も多いでしょう。やればいいというものでも無いのでしょうが、元ベーシストの私はこのリズムマジックが大好きです。

じゃあ実際にラヤカリを聴いて解説と共に理解してみましょう。私のシタール演奏で表現しています。

layakari_a.mp3

Rag BehagにてVillambit Teentaal(16beat)です。1周目は通常のテンポ、スタイを始めて2周目からラヤカリです。では解説行きます。

このパターンではまずタブラの1マトラに6つの音符を置いてますが、アクセントは8です。結果、タブラが4マトラ刻む間、シタールは3マトラを刻むような形になっています(下記参照)。

sitar 1 * * * * * * * 2 * * * * * * * 3 * * * * * * *
tabla 1 * * * * * 2 * * * * * 3 * * * * * 4 * * * * *

このまま行くと、タブラが16マトラ刻むとシタールは12マトラ刻みます。これをEktaal(12beat) in Teentaal(16beat)と言います。この例は比較的シンプルなものです。

後半はそこからやけくそラヤカリターンを展開、そしてサムに持っていってる形です。最終的にはティハイ+ムクラ返しで終わらせています。

では次の例です

layakari_b.mp3

Shiv Kumar Sharma氏の持ち技をシタールに応用したものです。Rag JhinjhotiにてJhaptaal(10beat)です。タブラが5マトラ刻む間にシタールは8マトラ刻んでいます。

こちらは完全に感覚ですので、前例の様に表で記述出来ません。

結果が、タブラが10マトラ刻む間にシタールは16マトラ刻みます。これはTeentaal(16beat) in Jhaptaal(10beat)となります。後半は6連でソロを展開していますが、本質は変わりません。

一見急に違うテンポになっている錯覚を覚えますが、きちんと合うべき所で合っているのがポイントです。
他にも色々な形があります。「何とかin何とか」とも言えないものももちろん多種多様です。聴いていて、何か合ってるのか合ってないのかわからないなぁと感じたら、ラヤカリなんだととりあえず思い込みましょう。

魔法には種があるもの。リズムマジック「ラヤカリ」の一部種明かしでした。しかし、これらを創作した人のセンスには脱帽です。はかり知れない数学的センス、リズムセンスを感じます。

余談ですが、ラヤカリを理解するのは大変難しい事と思います。私は理解してますが、誰に解説しても「?」でした。つまり私は説明下手という事でしょうか?なので(え?)理論的に理解せず、その混沌を楽しんで頂ければ宜しいかと思います。

p.s.mp3ファイルは以前、私がタブラ奏者の方何人かに練習用としてお渡ししたものを使用しております、当時、ネタバレ防止の為他者には聞かせないよう(器が知れるなぁ)お願いしておりましたが、ここで公開しましたのでそれはもう無しって事で。あぁすいません、すいません。